離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
「いいの? ここに帰って来て」
「当たり前じゃん。ここはりっちゃんの家でしょ」
「……っ」
家政婦のシフトが入っていなくても、この家に帰って来ていいのだと思うと、胸がいっぱいになる。
どうにも涙腺が弱くなってしまっているようだ。
また涙が溢れ出てくると、夏芭が慌ててティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう、夏芭……」
鼻は噛みすぎて真っ赤になっている。
夏芭は六花をベッドの上に座るように勧め、背中をさすりながら訊ねた。
「それでりっちゃん、何があったの?」
「さっき惺久さんと食事をしていたら、母が現れたの……」
「えっ……」
「惺久さんと知り合いみたいだった。私の母親だってことも知ってたの」
「どういうこと!?」
「わからない……」
本当に何が何だかわからない。
両手で顔を覆い、項垂れる六花に夏芭は優しく寄り添いながら訊ねた。
「惺久さんはりっちゃんのお母さんだって知ってたけど、黙ってたの?」
「……」
こくりと頷く。
六花の目にまた涙が滲む。
「会話からして、母が惺久さんに何か相談してたんじゃないかと思うの。仕事上話せなかったのかもしれないけど……母のことを知っているなら教えてくれても良かったのに」
「りっちゃん」
「わかってるよ、わかってるんだけど……でも苦しい」
惺久にも事情があったのかもしれない。
頭ではわかっていても、心は追いつかない。
惺久に嘘をつかれていた、騙されていたのかもしれないと悪い方向ばかりに考えてしまう。
「惺久さんは、私が母の娘だと知っていたから結婚したのかも……っ」