離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
痛いところを突かれ、六花は「ウッ」と呻く。
実際今も惺久の話を聞かず、逃げ出してきてしまった。
「惺久さんも黙ってたのは良くないよ。正直ぶっ飛ばしてやりたいよ」
「夏芭ったら、ぶっ飛ばすなんて」
「私言ったもの、契約結婚だろうがりっちゃんのこと絶対幸せにしてって。嘘つきじゃない」
夏芭は本気で怒っているらしく、プリプリと頬を膨らませていた。
こんな時にどうかと思うが、夏芭が怒ってくれることが嬉しくてたまらない。
「うう〜〜……」
「ああ、泣かないで」
「違う、これは嬉し涙だから。夏芭が怒ってくれるのが嬉しくて」
「……りっちゃんさ、覚えてる?」
夏芭は六花にティッシュを箱ごと渡しながら言った。
「私がヒトの彼氏奪ったって知らない女が殴り込みに来たことあったじゃない」
「ああ、あったね」
当時夏芭はある男性に言い寄られていた。
夏芭は純日本人はタイプじゃないと全く相手にしていなかった。
すると家にその男性の恋人だという女性が乗り込んできた。
「他人の彼氏を奪った泥棒猫」と夏芭に向かって掴みかかろうとした。
それを制したのが六花だった。
「夏芭はそんなことしません。自宅にまで押しかけてくるなんて非常識かつ迷惑です。お引き取りください」
喚き散らしていた女性に対し、臆することなくキッパリと言い切った。