離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 それからしばらくして、鞄の中に入れっぱなしにしていた六花のスマホが鳴っていることに気づいた。
 惺久からの着信だ。

 チラリと夏芭を見やると、夏芭はこくりと頷く。
 深呼吸してから、六花は通話マークをタップした。


「……はい」
《六花!!》


 惺久にしては珍しく、切羽詰まったような声だった。


《よかった。今どこにいるんだ?》
「夏芭の家です」
《そうだったのか。六花、すまなかった。六花のことを傷つけてしまった》
「……いえ、私も勝手に飛び出してごめんなさい」
《今日は、夏芭さんのところに泊まるのか?》
「えっと……」


 少しスマホを離し、小声で「泊まるのかって聞かれた」と夏芭に言うと、夏芭は惺久にも聞こえるような大声で言った。


「今日はりっちゃん、うちに泊まりまーす」
「……だそうです」
《そうか、わかった。では明日の朝に迎えに行く》
「えっ、迎えに? 大丈夫です、一人で帰れます」
《そうさせてくれ。そしてきちんと話をさせてくれないか》


 電話越しで姿は見えないはずなのに、真剣な眼で六花を見つめる惺久の姿が目に浮かぶ。


「はい。私もそう思っていました」
《……ありがとう》


 惺久の声はどこか安心したようだった。


《それでは、夏芭さんに代わってくれないか》
「え?」


 戸惑いながら夏芭に代わると、夏芭はムムッとした表情で惺久の話を聞いている。
 会話は六花には聞こえない。


「今度りっちゃんのこと泣かせたら承知しませんからねっ」


 そう言って夏芭は電話を切った。


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