離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


「……あ、ごめん。勢いで電話切っちゃった」
「ううん、大丈夫。惺久さん、なんて言ってたの?」
「妻をよろしくお願いします、って」


 “妻”という言葉に思わずかあっと顔が熱くなる。

 夏芭から返されたスマホを見ると、メッセージがたくさん届いていた。着信履歴も何件もある。


(惺久さん、すごく心配してくれていたんだ……)


 もう一件、新たなメッセージが届く。


《明日10時くらいに迎えに行く。おやすみ》


 それだけのメッセージに胸がきゅうっと締め付けられた。
 六花も「おやすみなさい」と返信した。


「りっちゃんお風呂沸かすねー」
「あ、私がやる」
「いいよ、いいよ。りっちゃんは今はお客様なんだから」


 夏芭はそう言ってくれたが、これまでの長い習慣でただじっとしているのは落ち着かない。
 夏芭がお風呂を洗ってくれている間、お茶を淹れることにした。


「何もしなくていいのにー」
「いえ、なんだか落ち着かなくて。残り物で良ければ、明日朝ごはん作るね」
「ほんと!? やったあ!」


 嬉しそうにはしゃぐ夏芭に目を細める。

 お風呂に入った後は、夏芭のパジャマを借りた。
 六花の部屋はまだ残っているが、夏芭が同じ部屋で寝たいというので夏芭の部屋に布団を敷かせてもらった。


「りっちゃん、お母さんのことは大丈夫なの?」




 それを聞かれると、大丈夫だとは言い切れない。

 惺久とはゆっくり落ち着いて話をすれば大丈夫かもしれないが、冬実と落ち着いて話せるかと言われると――自信がなかった。


「……母のことは、惺久さんと話してから考える」
「そっか。それでいいと思うよ」


 夏芭は優しく微笑む。


「りっちゃんなら、大丈夫だよ」
「ありがとう」


 六花も優しく微笑み返した。

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