離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
* * *
翌朝、十時きっかりに惺久は迎えに来た。
惺久の目の下には隈ができていた。
六花の顔を見るとホッとしたように微笑み、夏芭には深々と頭を下げる。
「夏芭さん、この度はありがとうございました」
夏芭は惺久に文句を言いたげだったが、先手を打たれてしまったためかやや複雑そうだった。
夏芭に見送られ、惺久の車で帰る。
助手席に座っている間、六花は何から話していいのか迷っていた。
すると、惺久から口を開く。
「お母さんのこと、黙っていてすまなかった」
「……」
やっぱり知っていたのか、と六花は項垂れる。
「ただ先に言っておく、結婚とお母さんのことは関係ない」
「!」
「お母さんと知り合ったのは偶然なんだ。去年うちの事務所に依頼に来て、俺が弁護することになった。詳しいことは守秘義務があるので話せないが」
「そうだったのですか」
「でも、六花のことはその前から知っていた」
「え?」
その前から知っていたとは、どういう意味なのだろう。
相談に来た冬実に自分のことを聞いたわけではないのだろうか。
「君のお母さん――古賀冬実さんは以前、娘を置いて出て行った過去があると話していた。君の話を聞いた時、もしかして古賀さんと親子なんじゃないかと思ってな。顔も似ていたし」
「……なるほど」