離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
第六章 重なり合う運命の糸
今から十三年前。
大学三年だった永瀬惺久は司法試験に向けて勉強していた。
次年度からは法科大学院(ロースクール)への進学が決まっており、そこで二年学んで司法試験の受験資格を得ることになる。
国内でも大手の永瀬法律事務所の跡取りでもある惺久は、司法試験の一発合格を父・章久から念押しされていたため、図書館にこもって試験勉強していた。
図書館には顔見知りがいた。
セーラーの制服を着た女子中学生だ。
と言っても話をすることはなく、惺久が図書館を訪れるとその少女が決まっているというだけだった。
恐らく高校受験に向けた勉強をしているのだと思うが、いつも熱心だなと遠目に見ていた。
「……あ」
ある時、惺久は紙で指を切ってしまった。
ページをめくろうとした時に親指を切り、血が滲み出た。
大した傷ではないが参考書を汚すのは嫌なのでどうしようかと思っていた時。
「大丈夫ですか?」
いつもいる中学生が話しかけてきた。
ほぼ毎日顔を合わせているものの、声をかけられたのはこれが初めてだったので一瞬動揺した。
「大丈夫。大した傷じゃないので」
「でも血が出てますね」
少女は自分のポーチを取り出し、中身を見て「あっ」と呟いた。
「ごめんなさい、こんなのしかなかったです……」