離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
キラキラと瞳を輝かせ、早速自分で解き始める。
数分後に解けた答えは見事に正解だった。
「うん、正解」
「やったあ!」
先程までは遠慮がちだったが、解けた嬉しさからなのか笑顔がはじけている。
「次の問題にいこうか」
「はいっ! あっ」
急に思い出したようにハッとすると、惺久に向かって深々と頭を下げた。
「糸井六花といいます。よろしくお願いします」
「ふっ、律儀だな。君の名前は知っていたが」
「えっ! なんでですか?」
「ここに書いてあるじゃないか」
トン、と指差したノートの表紙には「糸井六花」と丁寧な字で書かれている。
「ああ、なるほど……」
「りっか、いい名前だな」
「……お兄さんの名前は?」
「俺の?」
名乗ろうと思って思いついたことがあり、惺久はニッコリと微笑む。
「内緒」
「ええっ!」
「よく知らない人には教えられない」
「私は名乗ったのに……」
「高校に無事合格したら教えるよ」
「むう……わかりました」
それから惺久は六花の勉強を教えるようになった。
正直なところ、何故勉強を教えるなんて言い出したのか。合格したら名前を教えるなどと言い出したのか、惺久自身もよくわかっていない。
ただ、六花という少女に興味を持ったのだ。
純粋で真っ直ぐで、感情のままに表情をくるくる変える六花のことをもっと知りたいと思った。