離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
六花は飲み込みが早いので、解き方を理解するとすぐに伸びた。
数学以外の教科も正答率が上がっていく。
ある日、六花がこんなことを言い出した。
「名前のヒントが欲しいです」
「ヒント?」
「だってお兄さんって呼び方寂しいし、頑張ってるから何かヒントください」
「うーん、そうだな。昔ながらの友達は俺のことハルって呼ぶ」
「ハル?」
「これ以上は合格してから」
「じゃあ、これからはハルさんって呼びます!」
「いいよ」
今になって思うことだが、少し意地悪めいたことを言ったのは六花の前では、“普通のお兄さん”でいたかったからなのかもしれない。
惺久の母方の祖父はあの六条財閥会長だ。
所謂やんごとない家系に生まれた。
どこにいても祖父の名前は大きく、誰もが惺久のことを六条財閥会長の孫、永瀬法律事務所の跡取りとして扱う。
時にそれは煩わしく感じることもある。
だけど六花の前では、大層な肩書きなんていらない。
飾らないありのままの自分のことを見て欲しかった。
(まだ中学生の子になんでこんなことを思うのかわからないけど)
六花と勉強していると、色んなことに気付かされる。
自分が六花と同じ年頃の時、こんなに真面目に勉強していただろうか。
難しい顔をしながら懸命に考えたり、間違えても何が違うのか理解しようとしていたり、できるようになると華のような笑顔で喜んだり。
素直で一生懸命な六花を見ていると、自分も頑張らねばと思わされる。