離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
夏芭の表情は明らかに「やっべ」と言わんばかりだった。
付き合いが長いのでわかる、夏芭はパーティーのことを忘れていたのだ。
「も、もちろん覚えてるよっ」
夏芭はメイクアップアーティストとして活動している。
学生の頃からメイクが大好きで新しいコスメを買う度に六花にモデルになって欲しい、とせがまれた。
父を亡くして失意のドン底だった六花に初めてメイクしてくれた時のことは、今でも忘れられない。
「かわいくなるだけで気分が上がるでしょ。笑ってた方がりっちゃんのお父さんも嬉しいと思うよ」
その夏芭の言葉に涙が溢れた。
夏芭のメイクは魔法のようで、誰かの心を温かく豊かにしてくれる。
まだまだ指名数は多くないようだが、きっとトップアーティストになると信じている。
しかし夏芭は腕は良いが、事務仕事やスケジュール調整が苦手で甘いところがある。
六花は何か別の予定とブッキングさせてしまったのではないかと考えた。
そして、その予想は見事に的中した。
「マスカレードパーティーですか?」
「そう! このパーティーね、毎年ものすごく人気で参加は抽選なの。今年はなんと当選したんだ」
夏芭が見せてくれたのは、とある高級ホテルで毎年開催されるというマスカレードパーティーの招待状だった。