離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。



 もしかして落ちてしまったのだろうかと心配した。
 翌日もそのまた翌日も六花を待っていたが、六花は姿を見せなかった。

 とうとう四月になっても、六花が現れることはなかった。


(もしかして落ちて、俺に会わせる顔がないと思っているのかな)


 六花が黙っていなくなるような子だとは思えない。
 だとすると、不合格だったことがつらくて惺久にも報告しづらいのかもしれない。

 当然連絡先なんて交換してなかったから、それ以来六花と再び会うことはなかった。
 所詮はほんの短い間、少しだけ勉強を教えただけの関係だ。

 六花との関係は唐突に終わった。


(結局名前を教えなかったな。もう俺のことなんか忘れているかもしれないけど)


 惺久もロースクールが始まり、頭を切り替えた。自分の勉強に専念した。
 だが司法試験の試験日には六花からの“お守り”を持っていった。

 結果は見事に一発合格だった。

 晴れて弁護士となった惺久は、それからは仕事一筋の日々を過ごす。
 恋愛をしたこともあったが、忙しさを理由に長続きはしなかった。

 従兄弟たちが次々と結婚し、弟の頼久の結婚が決まっても恋人すらつくらない惺久に祖父の國光は会う度にちくちく言っていた。


「惺久は儂にひ孫を抱かせてくれんのか」
「抱かせてあげたい気持ちは山々ですが、生憎相手がおりませんので」
「それなら見合いをするか」


 ついに見合いの話を出され、うんざりしていた時だ。

 あのマスカレードパーティーで運命の女性に出会った。


< 90 / 115 >

この作品をシェア

pagetop