離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
マスカレードパーティーに出席したのは、従兄弟の六条桐光に頼まれたためだ。
あのパーティーを運営しているのは六条財閥系列のグループ会社であり、サクラとして参加してくれないかと招待状を渡された。
「もしかしたら良いひとと巡り逢えるかもしれないぞ」
桐光はそう言ってニヤニヤしていた。
祖父に結婚を迫られていることを見兼ね、相手を探して来いとでも言いたいのだろう。
余計なお世話だと思いながらも、渋々パーティーに向かった。
想像以上に賑わっており、様々な人間が皆仮面を付けて各々に楽しんでいた。
(サクラなんて必要ないだろ。桐光のやつ、ハメたな)
もう帰ろうかという時に出会ったのが、“涼風夏芭”だった。
彼女とぶつかった拍子に履いていたパンプスのヒールが折れてしまった。
「申し訳ございません、僕のせいです」
「いえ……」
「弁償させてください」
「えっ?」
「失礼します」
彼女のことを抱き上げ、人目も気にせず会場から立ち去った。
突然横抱きで運ばれ、彼女はとても困惑していたがそれどころではない。
会場外の廊下にあるソファに座らせると、彼女の足首が真っ赤に腫れ上がっていた。
「これは……大変申し訳ございません」
惺久は改めて謝罪し、すぐにタクシーを呼んで病院へ連れて行こうとした。
しかし彼女が慌てて制する。
「見た目程酷くないと思います。少し休めば大丈夫です。靴はクロークに預けてあるのがありますから……」
「そうですか。では僕が代わりに荷物を受け取ります。ここで休んでいてください」
「ありがとうございます」