離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
クロークで彼女の荷物を受け取って渡すと、彼女はお礼を言って高いヒールのパンプスからペタンコのパンプスに履き替えた。
かなり長く履いているのか履き潰しており、靴の外側は黒ずんでいる。
(良いところのご令嬢にしては珍しいな)
真紅のワンピースドレスはとても華やかでよく似合っているが、ボロボロのパンプスはチグハグだ。
だが惺久はそんな姿に何故か興味を惹かれた。
「この後お時間はありますか?」
「え? はい」
「このパーティーに参加者だけが無料で使えるラウンジがあるんです。そこで少し休みませんか?」
もちろん足を怪我しているのにこのまま放っておけなかったからでもある。
だがそれ以上に、この女性と話してみたいという好奇心が強かった。
自分から女性を誘うなんて初めてのことだ。
やや戸惑いながらも了承してくれたので、二人はホテルの三十二階にあるラウンジへと向かった。
*
涼風夏芭と名乗った女性は、豪華絢爛なパーティーの参加客とは思えない程、遠慮深く慎ましやかな女性だった。
「涼風と言いますと、もしかしてSuzukaze.incさんの?」
「は、はい」
「そうでしたか。母がSuzukazeさんの家具を気に入っているんです。十年前に買ったクローゼットが色褪せず、未だに綺麗だと言っていました」
「ありがとうございます」