離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
Suzukaze.incは今時のオシャレなデザインとリーズナブルな価格の家具で人気を博し、業績も右肩上がりのインテリアメーカーだ。
特に涼風凪子社長の経営手腕については、惺久の耳にも届いている。
「だん……いえ、父と母が聞いたら喜ぶと思います」
夏芭はとても緊張していたが、受け答えはしっかりとしていた。
「涼風さんはお母様の会社にお勤めなのですか?」
「いえ、私は別の仕事をしております」
「そうなのですか」
夏芭は赤ワインをなかなか早いペースで飲んでいた。見かけによらず酒に強いらしい。
「お酒はよく飲まれるんですか?」
「あっ、えっと……」
グラスを置いて、少し恥ずかしそうに目を伏せる。
「このパーティーに参加するのは初めてでしたので、緊張してしまって。喉が渇いていたんです」
「そうでしたか。遠慮なく飲んでください」
夏芭は今まで惺久が相対してきた女性とは全く違った。
社長令嬢だということを鼻にかけることはなく、とても控えめだ。
だがお酒が進むにつれて緊張がほぐれたのか、段々と口数が増えていく。
彼女の持つふんわりとした雰囲気は、なんだかとても癒された。
そして、接していると何故か初めて会った気がしなくなる。
彼女の控えめな純粋さを、惺久は知っているような気がする。
(初対面の女性にこんなことを思うのは初めてだな……)
驚くほど自然に、彼女ともっと一緒にいたいと思っていた。