同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 あのボロ家とは違い、高級感&清潔感ありの社長宅。
 こんな部屋になら、ずっと住んでたいわーっと、ふかふかの布団にくるまっていたのだが……
 ――どうも眠れない。落ち着かない。
 
 おかしい。
 枕が違っても睡眠はちゃんと取れるタイプなのに。
 おまけに。
 忘れたいのに。

 あいつ、ちゃんとご飯食べたのか? とか、別に可愛がってもなかったのに、シバは散歩に行っただろうか? ……とか。
  余計な事を考えてしまう。
 
 とりあえず、寝よ。

 明日は土曜日。
 
 何がなんでも転居先、探さなきゃ。
 
 そうだ。
 不動産の前に病院にも。

 いっその事、病院に住まわせて貰えないかな。

 深夜二時。ようやく睡魔が訪れた時――

 「結依ちゃん」

 社長の呼ぶ声が聞こえた。
 

 ――来た。
 
 社長に呼ばれたら行かなきゃいけない。布団から這い出る。
 
 ……あー。やっぱり。嫌だな。
 
 いざ、という時の為に近くにあったティッシュを持参。

 「結依ちゃん、こっち!」

 焦れた声に覚悟を決めて、私は、社長のいる寝室の戸を開けた……途端に抱きつかれた。
 
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