同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 「う、……わぁ」

  ピクピクとまだ動くGを見て社長は固まっていた。

 「一匹居るという事は百匹いるかもしれませんよ」
 
 大袈裟に脅かしながら、大量のティッシュで社長の天敵をくるみ、ゴミ箱に捨てた。
 そんな私を尊敬に近い眼差しで見る社長。

 「結依ちゃん逞しいね……いっそのこと全部殺すまで居てくれてもいいよ」

 逞しくはない。
 ただ鼠より、やりやすいというだけで私だってゴキブリは嫌いだ。

 それにしても。
 普段どんなに仕事が出来て紳士であっても、G一匹でこうも変貌するのは笑える。
 そして、TL展開にならないのも、私らしい。
 なったとしたら、らしくない。


 「ありがとうございます。泊めて頂くのは今夜だけで大丈夫です」

 
 
 
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