同棲中彼は、顔だけかも、しれない。


 翌日。
 母を見舞った後、私の足は自然と家に向かっていた。
 
 閑静な住宅街から少し離れた場所にある築九十年の家。
 きっと震度五以上の地震が来たら倒れてしまうだろう。
 そんな家に、やっぱり戻ってきてしまった。

 
 「シバ? 何で外に繋がれてるの?」

 室内犬だったはずのシバが、玄関先に居たので驚いた。

 「ちょ、……くすぐったい」
 
 尻尾をクルクルと激しく動かす。
 腰を落とした私の顔を、しきりに舐める。
 普段はなついてないのに、たった一日家を空けただけでこうも犬は喜んでくれるのか。

 それにしても。
 私が出ていった途端に犬を外に出すなんて。
 飼育放棄? ここまでダメな奴?



 



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