同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 有無も言わさず、私を座らせて自分は呑気に唄を歌う。

 なんだ、こいつは?  と思ったけれど。
 ある意味、斬新なナンパに私の心は少しだけ救われた。

 この頃、まだ建設現場で仕事をしていたアタルの住処は、今の一軒家ではなく普通のアパートだった。
   
 そこであれよあれよと、あっという間に関係を深め、現在に至る。

 途中、仕事も辞めたアタルに何度も愛想を尽かしそうになったが、やっぱり一人になるのは怖かった。
 
 超貧乏でも、いつでも傍にいてくれる存在は、私の支えだったからだ。
 
 
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