同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 「何をお探しですか?」

 鼠と対面した翌日。
 仕事帰りにドラッグストアーで殺鼠剤を探していたら店員に声をかけられた。
 さっきからずっと防虫コーナーで商品を睨む私は不審な客だったのかもしれない。

 「実は、ね……」

 言いかけて止めた。

 「″ね″?」

 「い、いえ」

 そして直ぐにその場を立ち去った。
 
 Gならまだいい。
 でも、流石に家に鼠が居るって恥ずかしくないか?  それに、チラッと見た防鼠剤、値段がお安くなかった。
 
 ――九百八十円。

 カツカツの生活をする私には高価な品だ。
 
 
 
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