同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 給料日まであと四日。
 財布の中には千五百円しかない。

 
 「またカレー? 俺、昼間も食ったんだけど」

 
 それなのにアタルは平気で文句を言う。

 「私だって弁当カレーでしたけど」

 「結依の事務所、電子レンジないって言ってなかった?」

 「無いよ。だから冷たいまま食べたけど」
 
 「わっびしいーねぇ」

 誰のせいだよ。
 ムカつきながら鍋を温めていると、シバが再び流しの下に向かって吠え出した。

 「……やだ、まだ鼠いるの?」
 
 そりゃ駆除しなきゃいるよね。
 こんなボロボロな家、鼠にとっちゃ巣作るのに最適なはず。
 
  ――……ん? 
 
 巣? となると、私が見た鼠以外にも沢山居るって事よね? あれが集団で現れたら……――
 
 ゾクっ! とした私は、アタルに家主へ駆除の手配を頼んで貰えないか聞いてみたのだが。

 「そのうちシバが爪で鼠を殺すさ。その為に伸ばしてんだから」

 頼む気なし。

 「爪伸ばしてるのは、単なる世話の怠慢じゃない。いくら散歩で削れるからって」

 「そんなん言うなら結依が爪切れよ」

 アタルが台所警備中のシバを顎で指した。

 「無理よ。暴れて嫌がるもん。元々、動物は苦手なのに」

 「じゃ、散歩で爪磨ぐしかねーやん、頑張れー」
 
 やっぱり丸投げ。
 何が頑張れだ、お前が頑張れ。

 「シバ、散歩行くよ」

 しかも、この柴犬。
 躾がなってないし、私に懐いてないから全然可愛気がない。
 
 散歩も好きなように歩いて回って言う事きかないから、時間がかかって仕方ないのよ。

 
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