あの人に会いにいく。
 先ほどまでの恐怖が一瞬だけ止んだような気がして、気がつくと私の左手は彼の右手に繋がれている。


 その時、心臓がとくんと優しく鳴った気がした。




「アンタ、あんなところで何してんだよ!」


 彼の口調は怒りに包まれていた。それもそうだ。あんなに大きな交差点で、しかも車が行き交う中、私は一体何をしていたんだろう。


 “動こうとしたけど動けなかった”なんて通用しない。だって私は、彼が助けてくれなければ車に轢かれていたかもしれないのだから。
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