あの人に会いにいく。
 真剣な顔をして坂下は言う。俺は、そんな坂下を見ていられずに目を逸らす。
 こういうのはきらいだ。誰かに真っ直ぐに見られると、居ても立っても居られなくなる。だから落ち着かせるよう無意識に首を触る。

「なぁ、京也。お前、何をそんなに躊躇してんだよ」

 怒っているような、悲しんでいるような、とにかくこの場には似合わない声色だった。
 わかってる、そんなことぐらい言われなくてもわかってる。

 本当はずっと、自分自身の内面を曝け出せる存在が欲しいのかもしれないって。だけど、それでも、やっぱり俺には無理なんだ。そんなふうに考えていいヤツでもない。幸せになっていいヤツでもない。

 その直後、先ほどのデリカシーなさすぎ発言により出て行った竹田先輩、空井先輩、その他諸々が戻ってきた。
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