ここで私は、明日の私を待つ
「起立、気をつけ、礼」


「ありがとうございました」


ようやく三限が終わった。


四限が待ち遠しかったせいか、一、二、三限が長く感じた。


川崎は一限の始めに、保健室で制服を借りて戻ってきた。


「アイツいつ移動するんだよ」


「遅すぎだっつーの」


咲希と杏奈がピリピリしている。


私は小さく足を動かして椅子を蹴りながら、川崎の動きを見ていた。


しばらくして私たちの視線に気づいた川崎は、体操着を持って小走りで教室を出て行った。


「はぁ、やっと出て行った」


「もう時間ないのに」


私たちは川崎の個人ロッカーを開け、カバンを取り出した。


川崎はもう行ったからバレることはない、大丈夫だ。


「あったあった」


佳子が川崎の弁当を取り出した。


「アイツ幼稚かよ」


川崎の弁当袋は、小さい子向けのアニメキャラクターの袋だった。


私たちは川崎の弁当を後ろの席に置いて、弁当箱を取り出した。


「ついでにこの袋も捨てちゃう?」


杏奈が言った。


「いいね!」


私はいいと思ったけど、佳子が顔をしかめた。


「でもさ、袋がなかったら怪しまれない?カバンに入れた時は袋があったのにって。中身だけ捨てて袋で包んだ方がいいかも」


「確かにそうだね」


そっと弁当箱の蓋を開ける。


「うわっ、まずそー」


「こんなの食べたくないわ」


川崎の弁当は、魚だらけだった。


魚は好きだけど、こんなに入ってると食べる気が失せる。


まあ私のじゃないんだけど。


私たちは川崎の弁当を持って、食堂のゴミ箱に捨てた。


これも『教室だと臭うから』という佳子の意見で。


「さっ、後は私がやっとくからみんなは先に行ってて」


まもなくチャイムが鳴る。


後は弁当箱を包むだけだし、私ひとりでも大丈夫だ。


「でも、それじゃあ美樹が怒られちゃうよ…」


「大丈夫。適当に言い訳しといて」


「わかった」


私はバタバタと教室を出ていく三人を見送った。
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