海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
着たこともない服に袖を通し、おぼつかない手で紐を結ぶ。
着物や浴衣とも違う。でも、現代の人が着るそれとも違う。民族衣装なのか、そうじゃないのか⋯いずれにせよ、古代の服装と捉えるべきかもしれない。

袖が広く、ゆったりとした直線的で流れるようなフォルム。裾の長いスカートのような履物。帯でしっかり留めて、上も下もひらひら⋯としたような、優雅なデザイン。

てっきり囚人の服を用意されてると思いきや⋯故人の尊厳を守ってくれるような配慮が、少し意外であった。

「まだおまえの刑は確定していないからな。狙いを吐くまでは生かしておかないと」

少年はそう言って、よいしょ、と私の腕を彼の肩に回し、担ぐように支えて⋯

ゆっくりと、一歩、一歩、洞窟の入口へと向かって歩いていった。
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