海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
私は再び木にくくりつけられ、男衆の訓練を眺めながら⋯その真剣な面持ちに、ふと思った。

「こんなに厳しく鍛えてるってことは⋯この世界でも戦争があるんだね」

隣りに座って私を監視する福へと⋯話しかける。

「人間界もあるのか?勿体ないな、寿命が短いのに争いごとで命を落とすとは。ここでは、部族の小競り合いはしょっちゅうだ。権力争いも熾烈を極める。まあ、禹王は多くの氏族と手を結びこの広大な地に基盤を築いたからな。しばらくは安泰であろうけど」

「日本は戦後100年に満たないけど⋯戦争を知る者はもうほとんどいない。戦争を、武力を放棄してる国だった」

「人間界と一緒にするな。ここは⋯時の流れが全く違う。100年など、ついこの前だ。お前には理解できない感覚かもしれないけど」

「えっ?」

「常に警戒しなくちゃあいけない。知能のないものは、まるで本能で丸出しで生きるから⋯無闇に殺生するだけ。天妖界は、地位をもってる者もいるけど⋯妖怪は基本的に野蛮だと言われるし、蔑まれる存在だ。力を持てば警戒され、謀反(むはん)を企てた、逆賊だ、と一族が滅ぼされる。争いがずっと燻っているんだ」

「⋯⋯天妖⋯。⋯待って、ちょっと待って。みんな人に見えるけど⋯違うの?」

「人間は排他的な種族だからな。妖族は恐ろしく信じがたい存在だと思ってるんだろう?こっちからすれば人間ほど愚かな生き物はいないと思うよ。頭がいい癖に、何も知らぬまま短かい命を生きる、気の毒な種族だ」

「⋯⋯⋯」
確かに、中国の古典は⋯人間と、神とが混在するような描き方をされていた。
けれど⋯、まさかここもそうであるだなんて。

一体⋯?

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