海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「世を司ってるのは天族だ。妖族でも能力ある者は天に遣わされる。この軍は、王の私兵さ。見つかれば、これだって謀反だと騒がれるだろうけど⋯常に命を狙われているから、守る術《すべ》が必要なんだ。つまり、防御のための兵。いつ来てもいいように、こうやって鍛錬してる」

(そうか、だからあの男は小国の軍に⋯興味を持ったのか)

「自衛のための⋯。つまり、ここは妖怪や神様がいる所っていう認識で当たってる?」

「う〜ん。まあ、間違ってはいない」
この世に妖怪や神がいるならば。
人間など意のまま、自由自在に運命を定めているって⋯こと?

人間の一生など、神々の戯れの中の一部だったり?

ん?待てよ。

「てことは、貴方達、皆⋯妖怪なの?いえ、神⋯?」

「何を今更。さっきの腕輪も見ただろ?アレは、高尚な妖族の毛を使った高度な錬霊術で、霊力の弱いものは触れることも許されない。見ることさえも⋯⋯って、海棠、お前は見えたのか?」

「うん」

「妖族では、王しか使えない術だろうし、見れたってのも、敢えて見せてくれたってことか。運がいいな〜おまえ」

「運がいい?」

「あれがあれば、周りが手を出せない。でも、命も握られてるけどな」

福は楽しそうにひと笑いして、ぽんぽん、と肩を叩いてきた。

「つまり、王は⋯」

「そういうこと。天帝より遣わされた妖族たちの主さ。妖族は、妖力が強く知己に富む者は50年の月日の間に人間みたいな風貌になっていくんだ。天族や人間界の者と何ら変わりはない。だから、馬鹿にされる謂れはないはずなのに⋯」

「あの男の姿は⋯人間に化身したものだとしたら、本当の姿は?」

「⋯⋯。⋯美しいだろ?王は数え切れないないくらいの武功を立てた。思想を読み、惑わし、策士のような⋯天族にも一目置かれる聡明な軍師でもある。お前もうっかりすると、逃げ出せなくなるぞ?」

本当の姿を尋ねたのに、福はそれをさらりとかわした。

「⋯⋯ねえ、福。貴方達って、人の姿から元に戻ったりしないの?」

「う〜ん⋯弱ったり、死に際だったり、妖力の気の巡りが止まれば、そうなるけど」

「福は元々、何だった?」

「⋯⋯なんか嫌だな。弱点聞かれているみたいで」

「いいじゃない、教えてよ」

「黙れ。つい喋り過ぎちゃったじゃないか。お前への疑いがとけた訳じゃあないぞ?基地に連れて来たのは、あくまでも王の監視下に置くためだ。訓練視察が終わったら⋯お前の処遇が決まるんだ。俺を巻き込んで余計なことするんじゃないぞ」

福はプン、とそっぽを向いて。でも、命令通りに監視しなくてはいけなくて。
ズリ、と尻ひとつ分離れて⋯チラ、チラ、とまたこっちを見た。
懐いたようで⋯そうじゃあない。

本当、リアクションがいちいち可愛い子だ。


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