海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
摩訶不思議な世界であると⋯思った。
福はここを天妖界だと言う。
でも、出会った者たちは皆人間の姿をしているし、言葉だって通じる。
現代日本とは大いに違うが⋯大昔のどこぞの異界へと足を踏み入れたような、そんな世界だ。
私は人間だと、やはり福は言う。
けれど、ここではそれが異質な生き物で⋯愚かだと。
人としての記憶が⋯混沌としている今、言い返すにも自分に誇りが持てない。
誰であるとすら、言えない。
それは、とても孤独で。
多くの仲間達と何不自由なく生きてきたであろう19年間がまるで虚像であったかのように⋯。
霞んでいくのだった。