海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜

第6話 有昧初衣 ― 泥に咲く花のサバイバル ―

そして、私の第2の人生が―⋯幕をあけた。

と、言っても。
なんとテリトリーの狭いことか⋯。

けれど拷問もなく、ただ尋問だけで済んでいるだけ―⋯ありがたい。

そう。有昧の邑へと連れて来られた私の現在住まいは―⋯。

貯蔵庫である。

ここに辿り着く前の道中⋯目視で確認した所、有昧の民は⋯、いわゆる半地下に住んでいるようだった。

その風貌。日本でいう⋯縄文時代の住居、たて穴式住居。

教科書や資料でよく目にしていた写真やイラスト、それとよーく似ている。

一方で、貯蔵庫は―⋯地上にあった。

福曰く、構造上湿気も少ないし⋯いい環境だ、と。

確かに―⋯出入口に麻布や(むしろ)が下げられているだけの半地下では⋯捕え人は、一目散に逃げ出すであろう。

確かに牢獄でないだけで、感謝だ。

有昧后よ、よく考えたものだ。

とは言え、この場所どうやら⋯邑の端にあるらしく。庭に出ても住人に会うことすらないだろう。そして何より―⋯この住居には、何も、ない。

食糧庫だったのか?武器庫だったのか?

その名残もない。

あるものは、おそらく最低限の生活必需品。

まずは寝具3点セット。

(むしろ)(※(わら)(あし)を編み込んだ敷物)が幾つかと、麻布の上掛けとが乱雑に置かれている。枕代わりの石も。

それから―⋯防寒セット。

獣の毛皮、そして、移動式の(いろり)であろうか?バケツのような形の陶器。

⋯以上である。

まさに―⋯新生活。

ぽいっと投げ込まれて、いきなり生活しろと言われても―⋯何もない。

生きてはいける。それは、間違いない。でも、ただそれだけだ。

つまり―⋯ここはまさに、心理的独房であった。

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