海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
財宝や金目の物には興味もない。執着もない。
こんなにボロボロで貧相な者に⋯持っている物など多くもないだろう。

彼女がここに来たて、5日程経った頃であろうか。
いつものように洞窟を訪れると、やはりいつものように⋯福の揚々とした報告の時間が始まった。
そして、いつもとは⋯ちょっと内容が違った。

唐突に声を出し、うなされたり⋯寝言を言ったり。「声を聞くのは初めてだ!」と嬉々として話す福とは対照的に、彼は黙ってそれを聞いていた。
無意識下で読み取る記憶と感情の中で⋯手掛かりを掴むことができていなかった。配下に調査させても尻尾は掴めなかった。何者かを把握せぬまま⋯正気を取り戻してしまえば、更に厄介になるであろう。
それを⋯至って面倒だと思ったのだ。

拷問をかけようが、ただのか弱き人間であるならば⋯耐えることもできず、なぶり殺しになってしまう。
処遇に⋯困る。

馴れ合いは好まない。
人間は、論外である。


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