海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「有昧王。貴方は私に色々聞くばかりで⋯ここのことも、自分のことも全く話してこなかった。福がおしゃべりだから少しくらいは何とか収集できたけど⋯ずっと不満だったんですよ。なーんにも知らないままでは、ただでさえ不安なのに、これでは拷問かけても本当のことを話す気にすらならない。⋯おわかりで?」
「⋯⋯試しに拷問を味わってみたいか?」
「冗談です。⋯夢でもブレないとは⋯」
「⋯聞きたいことがあるなら聞いておけばいい。機会は二度とないかもしれない」
浮游は硬い表情のまま⋯淡々と話す。
「では、遠慮なく聞きます」
「⋯⋯⋯」
「ここが天妖界だと聞いたけれど⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
「一反木綿はいるの?」
「⋯⋯⋯⋯」
「その反応は、いないとみた。では⋯ぬらりひょんは?」
「⋯⋯⋯⋯」
「妖怪の、ボスです」
「⋯⋯⋯」
「ろくろ首!1つ目小僧!座敷わらし!」
「⋯⋯⋯」
「ほら、答えてくれないじゃないですか」
「知らぬものにどう答えよ、と?」
「⋯いないのか⋯。残念、知っている妖怪を並べたのに⋯聞き損だった」
「くだらない。⋯もう満足か?」
浮游は急に立ち上がり、苛立った眼差しで⋯海棠を睨む。
「待って待って。ここからが⋯本題」
彼女は浮游の衣の袖を掴んで、再び横に座らせる。
「では⋯、九尾の狐は?」
「⋯⋯東側に住む氏族が、九尾狐の一族だ」
「キタ!韓国ドラマで観たことがあるんだよね。本当にいるんだ」
「⋯⋯?」
「あれってどうやって尻尾が9本生えているのか見たことは?千手観音みたいになるの?」
「千手観音?」
「もどかしいな。やってみるから、早くこの腕を解いて」
夢であるから、と高を括っているのか、海棠のその傲慢な物言いが癇に障る。けれど彼はそれすらも、固い表情と共に⋯表に出すことはない。
普段ならしないであろうが、特殊な状況下に置かれたが故に⋯術を解いてみる。
するとどうだ⋯。海棠は自身の両腕をいっぱいに広げて。
「まず、この辺」
と、左右対称にしてピタリと止める。
位置をずらして⋯
「次は、ここ」
また位置をずらして⋯「次」と、繰り返していく。
「それではまだ8本だが?」
浮游の鋭いツッコミが入る。
「残り1本は真上にピーンと立ってるイメージ。垂れ下がってたらサマにならない」
「⋯⋯⋯」
「これが、千手観音的な。無限の手と目で人々を救う菩薩様のこと。⋯違う?そんな感じではないか。それともそれぞれが勝手に動くから、絡まって絡まってままならなくなる狐も?」
「本人に聞いてみよ。1度痛い目に遭わないとその減らず口は黙らないようだ」
「⋯⋯⋯。ケチケチせずに教えてくれればいいのに。どうせ人間にはどうにもできないんだから」
「それよりももっと奇妙な妖怪にどこかで会ってるかもしれぬぞ」
「どこかで⋯?」
「そう。もう既に」
浮游はじっとグレーの瞳を海棠に向けて。その目を捕らえる。
「⋯⋯試しに拷問を味わってみたいか?」
「冗談です。⋯夢でもブレないとは⋯」
「⋯聞きたいことがあるなら聞いておけばいい。機会は二度とないかもしれない」
浮游は硬い表情のまま⋯淡々と話す。
「では、遠慮なく聞きます」
「⋯⋯⋯」
「ここが天妖界だと聞いたけれど⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
「一反木綿はいるの?」
「⋯⋯⋯⋯」
「その反応は、いないとみた。では⋯ぬらりひょんは?」
「⋯⋯⋯⋯」
「妖怪の、ボスです」
「⋯⋯⋯」
「ろくろ首!1つ目小僧!座敷わらし!」
「⋯⋯⋯」
「ほら、答えてくれないじゃないですか」
「知らぬものにどう答えよ、と?」
「⋯いないのか⋯。残念、知っている妖怪を並べたのに⋯聞き損だった」
「くだらない。⋯もう満足か?」
浮游は急に立ち上がり、苛立った眼差しで⋯海棠を睨む。
「待って待って。ここからが⋯本題」
彼女は浮游の衣の袖を掴んで、再び横に座らせる。
「では⋯、九尾の狐は?」
「⋯⋯東側に住む氏族が、九尾狐の一族だ」
「キタ!韓国ドラマで観たことがあるんだよね。本当にいるんだ」
「⋯⋯?」
「あれってどうやって尻尾が9本生えているのか見たことは?千手観音みたいになるの?」
「千手観音?」
「もどかしいな。やってみるから、早くこの腕を解いて」
夢であるから、と高を括っているのか、海棠のその傲慢な物言いが癇に障る。けれど彼はそれすらも、固い表情と共に⋯表に出すことはない。
普段ならしないであろうが、特殊な状況下に置かれたが故に⋯術を解いてみる。
するとどうだ⋯。海棠は自身の両腕をいっぱいに広げて。
「まず、この辺」
と、左右対称にしてピタリと止める。
位置をずらして⋯
「次は、ここ」
また位置をずらして⋯「次」と、繰り返していく。
「それではまだ8本だが?」
浮游の鋭いツッコミが入る。
「残り1本は真上にピーンと立ってるイメージ。垂れ下がってたらサマにならない」
「⋯⋯⋯」
「これが、千手観音的な。無限の手と目で人々を救う菩薩様のこと。⋯違う?そんな感じではないか。それともそれぞれが勝手に動くから、絡まって絡まってままならなくなる狐も?」
「本人に聞いてみよ。1度痛い目に遭わないとその減らず口は黙らないようだ」
「⋯⋯⋯。ケチケチせずに教えてくれればいいのに。どうせ人間にはどうにもできないんだから」
「それよりももっと奇妙な妖怪にどこかで会ってるかもしれぬぞ」
「どこかで⋯?」
「そう。もう既に」
浮游はじっとグレーの瞳を海棠に向けて。その目を捕らえる。