海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
自分の発言を恥じ、思わず下を向いたその時、ひゅうっと風が纏わりついて⋯バランスを崩しかける。
「危ない」とすぐさま男がひき戻して。
私はホッと胸を撫で下ろす。
ふっと笑みがこぼれた。
不思議な―⋯空気感。喋らなくても、それでもいいような。何とも言えない、間合いが生まれる。
この者は、きっと天族の者なのであろう。この気品。ちっとも驚きもせずに、こんなにも落ち着いた対応。
すると⋯、だ。
男は徐に肩にかけていた組紐を解いて小壺を取り出すと⋯、栓を外して、それを口にしようとする。
―⋯が、私の執拗な?視線に気づいたのであろう。
その動作を止めたかと思うと、今度は懐から白玉の杯を取り出して、私に⋯それを持たせた。
小壺を傾けてなみなみと、何かを注ぐ。
「⋯⋯あの。⋯私、まだ19歳でして。お酒はまだ飲んではいけない歳なのです。法を犯すことに」
「19?もう立派な大人ではないか。飲みたいのであれば、共に飲みましょう」
「でも、酔ったらここから落ちてしまいます」
「⋯⋯。今夜は満月です。月見酒に付き合ってくれるのなら、落としもしないし酔わせもしません」
「⋯⋯⋯」
人間界でも経験していないことを、ここで⋯?
けれど⋯この者の落ち着き払った雰囲気と、私の好奇心と、そして何より⋯
ここに来て、初めて自分を尊重してくれる人との出会いへの嬉しさとで、私は⋯杯を彼が持っている小壺とカチっと音を立て合わせると。
それをぐいっと一気に飲み干した。
喉が―⋯カッと一気に熱くなる程の―⋯強いお酒。
思わず、咳き込むものの⋯⋯。何であろう?どろっとした雑味すら味わい深い。
ここで食す物は、きっと全てが。
原始的な―⋯歴史の【はじまり】の味であろうから。それだけでも大きな価値のあるものに感じるのだ。
「危ない」とすぐさま男がひき戻して。
私はホッと胸を撫で下ろす。
ふっと笑みがこぼれた。
不思議な―⋯空気感。喋らなくても、それでもいいような。何とも言えない、間合いが生まれる。
この者は、きっと天族の者なのであろう。この気品。ちっとも驚きもせずに、こんなにも落ち着いた対応。
すると⋯、だ。
男は徐に肩にかけていた組紐を解いて小壺を取り出すと⋯、栓を外して、それを口にしようとする。
―⋯が、私の執拗な?視線に気づいたのであろう。
その動作を止めたかと思うと、今度は懐から白玉の杯を取り出して、私に⋯それを持たせた。
小壺を傾けてなみなみと、何かを注ぐ。
「⋯⋯あの。⋯私、まだ19歳でして。お酒はまだ飲んではいけない歳なのです。法を犯すことに」
「19?もう立派な大人ではないか。飲みたいのであれば、共に飲みましょう」
「でも、酔ったらここから落ちてしまいます」
「⋯⋯。今夜は満月です。月見酒に付き合ってくれるのなら、落としもしないし酔わせもしません」
「⋯⋯⋯」
人間界でも経験していないことを、ここで⋯?
けれど⋯この者の落ち着き払った雰囲気と、私の好奇心と、そして何より⋯
ここに来て、初めて自分を尊重してくれる人との出会いへの嬉しさとで、私は⋯杯を彼が持っている小壺とカチっと音を立て合わせると。
それをぐいっと一気に飲み干した。
喉が―⋯カッと一気に熱くなる程の―⋯強いお酒。
思わず、咳き込むものの⋯⋯。何であろう?どろっとした雑味すら味わい深い。
ここで食す物は、きっと全てが。
原始的な―⋯歴史の【はじまり】の味であろうから。それだけでも大きな価値のあるものに感じるのだ。