一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「岡田さん、そのシャツ、洗います」
 
 ドアから顔を覗かせた私を、怪訝な顔で見上げた岡田は、
 

「なんで」
 と、シャツについた鼻血には気が付いてないようだ。
 
 この人、トイレ行った時に鏡とか見ないの?
 
「それ」
 
 私の指し示す所を見て、ようやく、「げぇ!」と汚した事が分かったようだ。
 
「お前の鼻血だよなぁ?! おう、洗え!洗え!」
 
 すかさずシャツと中の肌着まで脱ぎ出した。
 
「ちょ、なんで裸になるの?!」
 
 慌てて目をそらしたものの、バッチリ見てしまった。
 
 とても均整の取れた肉体を。
 
 そこいらの女よりも綺麗な身体の線だ。
 
「館内のランドリーで洗うんだろ? ついで!」
 
 岡田は、私に向かってそれを丸めて投げ渡した。
 
「まず、部分洗いしろよ。間違ってもいきなり洗濯機に入れるなよ」
 
「言われなくてもわかってます」
 
 男の癖に細かい。
 
 岡田の部屋を出て、ランドリールームを探す。
 
 確か、乾燥機もあったはず。
 
 時計を見て、宴会まであと一時間あることを確認して洗濯機を回した。




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