一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 洗濯機を回してる間に、宴会席のチェックをしなきゃ。
 
 廊下に出てエレベーターを待っていると、
 
「桑崎さん、洗剤の匂いがする」

 背後から聞き覚えのある声に呼び止められ、振り向いた。
 
「……え」

 けれど、一瞬、誰だか分からなかった。
 
「何とぼけた顔してるの?」
 
 掠れた声は、間違いなく蛯原さんなのだけど。
 
「蛯原さん、よね?」
「他に誰がいるの」
 
 
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