一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 背後から話し掛けられて、ビクッとなった。
 
「え、ええ。あれ、三宅さん?」
 
 振り返ると、浴衣姿でもない三宅くんがビニール袋を持って立っていた。
 湿ったランドリールームに、爽やかな男性の香水が漂う。
 
「洗濯するんですか? 温泉は?」
 
「やっぱり、今日は夕食後に行こうと思って」
 
 
 あらら。蛯原さん、残念。

「あ、こっち洗濯機、空いてますよ。どうぞ」
 
 洗濯槽を譲り、岡田のシャツを乾燥機に入れようとすると、

「それ、男物……?」
 
 三宅くんが気が付いてしまった。

「あ、これは運転士の岡田のシャツです。私が吊り橋で汚してしまったから」
 
 そう答えると、三宅くんの顔はまた曇った。
 
「あの人には、毎回……」
 
「え?」

「……いや、なんでも」
 
 昼間から、三宅くん、ちょっと変。
 
 岡田の名前を私が出すと元気がなくなる。
 
「……あ」
 
 まさか。
 
 突如、ピンときた。

「……なんですか?」
 
 三宅くんが眉間にシワを寄せる。
 
  嫉妬?
 
< 110 / 316 >

この作品をシェア

pagetop