一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 僕の部屋 ?
 
「……え……」
 
 それって。
 
「できたら、夜の方がいいんだけど」
 
 続く三宅くんの誘いの言葉に、さっきまで開いていた 腐の花が急激に(しぼ)んでいくのが分かった。
 
 この人、ノーマル……。
 やっぱり、岡田の片思い。
 というか、
 
「いえ、お気遣いなく。自分の部屋でないとゆっくりもできないので!」
 
 この状況はマズイ。
 
 私は立ち上がって、三宅くんの抱擁からすり抜けた。
 
 一つのツアー中に、複数のお客様からこんな風に求められるなんて、隙だらけな証拠だ。

「じゃあ、宴会場でお待ちしてますね」
 
 岡田のシャツを乾燥機にかけたまま、逃げるようにランドリールームを出た。
 
 三宅くんの顔は見なかった。
 
 抱擁の余韻を打ち消すかのように、部屋に戻って顔を洗う。
 
 三宅くんも本気じゃない。若気の至り。
 
 そして、旅のせいで気持ちが開放的になっているせい。
 
 私も、どんなに素敵な人でも、もう二度とお客様との恋愛はしない。

 そう決心したんだから。






 
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