一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 漫画のようにほっぺをパン!と軽く叩いていると、バスから降りたドライバーの岡田が、水を片手に此方を見ていた。
 
 人を小バカにしたような目だ。
 
 「お疲れ様です」
 
 会釈をして挨拶をすると、
 
 「……もう終わりだな」
 
 「え」
 
  岡田が、ボソッと言った。
 
 「次の桜の名所も終わってるよ」

 あぁ、なんだ。桜ね。
 
 「やっぱり、そうですよね」
 
 そんなことは私だって予想済みだ。
 地元でさえ散ってるのに、暖かい鹿児島なら尚更だ。
 
 「で、どうする? 行くのか?」

 「え」
 
 





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