一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「そうだな。仕事なんて何でもいいもんな。倫子と一緒にいられるなら」
 
「そうよ。別に旅行会社じゃなくったっていいわよ」
 
「そういえば、友達にバーテンしないかって誘われてたんだ」
 
「……え」
 
「中学の同級生に(とび)職やってる奴いたなぁ、見習いに行こうかな」
 
「ちょっ……! 学歴関係ない仕事ばっかりじゃないの!」
 
  ただ、倫子は、職種には俺以上に拘る女で、
 
「人に聞かれて恥ずかしくない仕事にして」だとか、
 
「収入が不安定なのはダメ」
 
  と、俺の為というより、将来も含めて世間体云々を気にしていたようだ。
 
 ……それも 仕方ないのかな。
 
  学生時代からの長い付き合いで、結婚の話をするようになっていたし、倫子はもう嫁同然の間柄だったから。


 結局、転職はしないまま、俺は、好きな英会話を生かせる国外旅行の法人担当になった。
 
 英語が得意になったのは、言うまでもなく、リバーの出ていた映画 (字幕版)で、発音を真似したり、和訳を考えるようにしていたから。
 
 自分が取ってきた仕事の添乗員にもなることで、望んでいた海外へも飛び、俺は充実した毎日を過ごしていた。
 
 ずっと、この幸せが続くと思っていた。



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