一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 なんと、引き抜きの話をしてきた。
 
 場所は、何回か利用したホテルのラウンジでだ。
 しかし、上野泰子と俺が口にするのは、酒ではなく珈琲。酔っているわけではなさそうだった。
 
「僕が、そちらのブライダル会社に?」
 
 カウンターにいる時から、サービス業や保険会社からの誘いは受けたことはあった。
 
「始めは私と同じ営業・企画の方で、いずれは一緒に経営の方へ携わって頂けないかと……」
 
「経営……?」
 
 上野泰子は頬を赤らめる。
 いつもの強気なくらい凛としたオーラは消えていた。
 
「結婚を前提に、私と付き合って頂けませんか?」
 
 この誘いには、プロポーズも含まれていたのだった。

 
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