一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「えっ?」
 
 上野泰子が怪訝な表情を浮かべたが、俺は構わずに、携帯電話を取り出して、その待ち受け画面を見せつけた。
 
 それは、もちろん、俺の中では永遠のヒーロー、
 リバーフェニックス、しかも映画の広告でも使われていた半裸の画像だ。
 
「……わかりませんか?」
 
 それを 覗き込んで見つめる上野泰子は、まだ俺の言いたい事に気がついていない。
 
「僕、本当は、女性は苦手なんですよ」

「えっ、冗談ですよね?」
 
 ようやく、俺の企み通りの反応を見せてくれた上野泰子は、信じられない、という顔をした。
 
「冗談でこんな事いいません。だから、あなたの気持ちには応えられない。申し訳ない」
 
 自分でも俳優になれるんじゃないかと思うくらい、リバーばりの繊細な表情で謝る。
 
「そう、そうだったの……そう言われてみれば、私に性的な視線を送らなかったの、岡田さんだけだった。変だと思ったの」
 
 へっ。
 と、鼻を鳴らしたいのを堪えて、悩ましげな表情を作り続けた。
 
 
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