一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「疲れ……かな」
 
 俺の視線に気が付いた桑崎が、俺に歩み寄ってきた。
 
「お疲れ様です」
 
 会釈する桑崎から視線をそらし、わかりきってる事を口にした。
 
「次の桜の名所も終わってるよ」
 
 一瞬でも見とれたのがバレないように、いつも以上にぶっきらぼうに。
 
「やっぱりそうですよね」
 
 桑崎がもう一度、桜を見上げた。
 
 ノーメイクに近い横顔を再度確認する。
 
 うん。
 やっぱり、さっきは疲れてたんだ。
 
 どこからどう見ても、姑に苛められている、どんくさい嫁にしか見えない。
 
「代案を考えておいたら」と付け加えてバスに乗り込んだ。
 
 俺は、水をごくごくと飲み干して目を瞑った。
 
 皆が飯を食ってる間に少し仮眠して、目の疲れも取ろう。



< 153 / 316 >

この作品をシェア

pagetop