一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 客の宴会が終わった頃、俺も手早く夕食を済ませ、外を散歩した。
 運転中にずっと座っているせいか、時間を見つけては歩かないと、腸の調子が悪くなるからだ。
 
 硫黄の匂いを満喫しながら、この時ばかりは旅の余情を楽しむ。
 

 散歩から戻りエレベーターに乗ると、一度、二階で止まり扉が開いた。
 
「あ……」
 
 そこには、リバー似の三宅が、焦ったような顔をして立っていた。
 エレベーターの中で、気まずそうにしていた。
 
 俺が大好きなリバーの画像を見せても、「知らない」と返すだけで、会話のキャッチボールが成立しない。
 
 最近の若い奴ってこうなのか? と呆れていたら、
 
「それより教えてください、桑崎さんの部屋。彼女が危ないかもしれないんです」
 
「危ない?」
 
  三宅は、ちょっと怖いくらいの目をして俺を見た。
  お。
  その目、ますますリバーだよ。
 

 
  そんなことより、やっぱ面倒臭いことになった。

「あんたはもう部屋に戻ってな」
 
 事情を聞いた俺は、三宅を置いて一人、桑崎の部屋に赴いた。



 
< 158 / 316 >

この作品をシェア

pagetop