一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 桑崎の部屋からは、強いニンニク臭と酒の匂いが充満していた。(精力づけにニンニクでも丸かじりしたのか)
 
 客の木下は、桑崎の上で目を丸くして俺を見た。
 
「………お」
 
 そして、見たくもないのに、浴衣のはだけた桑崎の貧相な身体を目撃した。
 
「良いところ邪魔しやがって!」
 
 木下に組伏せられ、首を横に振る桑崎の正露丸みたいな目が涙ぐんでいたから、これはレイプなんだろうと確信。
 
 喧嘩が苦手な俺は、高齢の父親の事を口に出して、木下を追っ払った。
 
 桑崎の顔が安堵で緩んだ。
 
「ありがとうございました」
 
 礼は良いから早くちゃんと浴衣を直せよ。
 
 俺は、桑崎を見ないように、匂いと熱気の籠った部屋の窓を開けた。
 



 





 
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