一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 しばらくバスを走らせて、関之尾滝に到着。
 
 すでに出来上がってる南条という客が桑崎に絡んではいたけれど、アイツは口ほど悪い男ではない。
 まぁ、大丈夫だろうと、俺も一番最後にバスを降りた。
 
 すると、初日に座席のクレームをつけていた赤石という老女がカメラを持って俺を待っていた。
 
「運転士さん、あんた、暇だろう? ここで滝を背景に私の写真を撮ってくれない?」
 
「暇ではない……です」
 
 なんだ、この婆さん。
 花を撮影するのが生き甲斐なのに、自分の写真が欲しいのか?
 
 ああ、そうか、年齢的に、
 
「遺影用に、候補の写真を揃え始めなきゃね」
 
 俺が言う前に、赤石婆さんは、ヒヒッと笑ってい
 た。
 いや、全く笑えないけれども。
 
 


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