一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 何でそうなる?
 廊下で俺と話す三宅を、若い女従業員がチラチラと見ながら通り過ぎていく。
 
 その視線なんかどうでも良さげに、三宅は俺を見据えている。
 
「そんなわけないだろ?」
 
「でも、今から桑崎さんを迎えに行くんでしょ?」
 
「それも仕事、だからな」
 
  他に理由はない。
 
「なら、僕も連れて行ってください」
 
 けれど、この男は、どうやら桑崎の事が好きならしい。
 
 たった二日間で人は恋に落ちるものなのか?
 
 少しでもそばにいたいという、気持ちはわからなくもないけれど、
 
「ダメだ」
 
 あくまで三宅は客の一人。
 
「何で? 夜は自由時間だろ? 客がどう過ごそうが勝手でしょ?」
 
 業務に関わらせてはいけない。
 
「どうしても個人的に桑崎に会いたいんなら、旅が終わってからにしてくれ」
 
 後は、俺の知ったことじゃない。
 
「……分かりました」
 
 はじめ、善人面してると思ったが、すんなりと引く三宅は、素直でいい奴だ。
 
「帰りに桑崎さんに変なことしないでくださいね」
 
「するか!」
 
 桑崎が若い客と恋愛関係になろうが、俺には関係ない。
 
 この時は、まだそう思っていた。







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