一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「あ、桑崎さん」
 
 岡田がバスに戻り、私に気が付いた三宅くんが寄ってきた。
 
「くまもん、好きですか?」「え」
 
 まさか、と思うけど。
 
「さっき運転手さんから頂いたんですけど、俺、鍵はキーケースじゃないとダメなんで」
 
 三宅くんもまた、自分への好意の印を私に譲り渡そうとした。

 どうして私なの?
 呪いのチェーンメールが回ってきた気分だ。
 
「それは、元の貰い主が持っておくべきかと」
 
 岡田の事だけど。
 
「あぁ、そうですね」
 
 言いながら、三宅くんは無造作にキーホルダーを鞄に仕舞う。少しだけ周囲を気にして、何かを決めたような顔をした。
 
「あの……」
「はい?」
 
「出発まで二人で話せませんか?」



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