一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「ツアーが終わってからも個人的に会って欲しいんです」
 
 彼の言葉は、何となく想像出来ていた。
 昨夜、部屋に誘われハグされた事を思えば。
 
 でも。
 
「今、会いたいと思ってくれていても、旅が終われば気持ちは落ち着いてきますよ」
 
 旅先の恋なんて、その場限りのもの。
 日常に戻れば薄れていく。
 
「どうしてそうだと言い切れるんですか? 僕の気持ちなんて推し測れないでしょ?」
 
 憤慨したように顔を赤くする三宅くんの、先ほど見てしまった涙がまだ忘れられない。
 
 
「あなたが会いたいのは本当に、私、ですか?」
 
 誰かを想っている間は、なかなか新しい恋が出来ないことも、私は知っている。

「なんで、そんな俺の気持ちをわかった風に言うんですか?」
 
 少し動揺の色を見せた三宅くんの目。
 
 私は、それを見つめたまま、何も言わなかった。
 
 三宅くんの喉仏がゴクンと上下した。

 
「……ひょっとして、霊感ですか?」
 
 いやいや。エスパーみたいに言わないで。

 
「そうじゃない、だって、見たから……」
 
「え」
 
「まだ、恋してる二人だった」
 
 あの片桐英子と会った後の涙と、あなたを見守る彼女の視線を。
 


 
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