一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 お客さま全員が乗車したあと、最後の点呼をしている時だった。
 
「あれー? 俺の席がねぇ」
 
 見知らぬ、大柄な中年男性がフラフラと乗り込んできた。
 プゥンと、南条さんに負けない位の酒の匂いがした。
 どうやら、酔って他のバスと間違っているらしい。
 
 蛯原さんと岡田が、駐車場に居る似たデザインのバスを指差している。
 
「あちらのバスとお間違えじゃないですか?」
 
 バスの奥までウロウロする男性を呼び止めると、
 
「バスと?」
 
 振り返るなり、完全にすわった目付きでジロジロと私を眺めた。
 
「ほんとだ、俺の添乗員、もっとバストおっきかったもんな、間違えるわけない」

「え」
 
 続けて失礼ついで、無遠慮に、がっ! と私の胸を片手で鷲掴みしてきた。
 
 



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