一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
「ちょっ………?!」

「おいっ!」
 
 後ろから 三宅くんが制しても、酔っぱらった男の不躾な言動は続いた。
 
「バストだけじゃない、顔もこんなブスじゃなかったし、肌ももっとピチビチしてたっけ、はは、乗り間違った」
 
 情けないことに、公然での侮辱に直ぐに言葉が出なかった。
 
「お邪魔したなぁー」
 
 と、最後に、パン! と私のお尻を叩いて入り口に向かう男の肩を、三宅くんが掴んだ。
 
「出ていく前に謝れよ!」

「あぁ? なんだ? カッコつけがー」
 
 男は、三宅くんをいとも簡単に突き飛ばす。彼の細い体は、通路を滑るように倒れた。
 
「三宅さん!」
 
 蛯原さんと同時に駆け寄ろうとしたら、入口のドアがシューっと閉まり、バスは動き出した。
 
 
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