一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 それから、一時間半弱で熊本港に到着。
 
「島原に着く頃は、薄暗くなってわかりづらくなりますので、大きな荷物をここでお渡ししておきますね。それをバスの座席の方へ置いて、フェリーには貴重品を持って行ってください」
 
駐車場にて、バスの下に納めていたスーツケース等を、岡田や蛯原さんと手分けしてお客様に渡す。

「くれぐれも船内のプレミアム室には入らないでくださいね。そちらをご希望のお客様は、各自お手続きください」
 
 フェリーに上がっていくお客さまを見送っていると、最後にバスを出てきた三宅くんと目が合った。
 
「…ぁ……」
 
 何か言いたげだったけれど、
 
「お気をつけて」
 
 と、微笑むだけにしておいた。
 
 二人の間に流れたぎこちなさに、蛯原さんが気が付いた。
 
「なんか、あったの?」
 
 
『やり直したい、もう人によりかからない。その上で桑崎さんに、また会いたいんです 』
 

 少し迷ったけれど。
 私は、三宅くんの気持ちにノーと答えた。


 

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