一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 フェリーがゆっくりと港を離れる。
 
 船内ではなく、デッキから海を眺めていると、カモメが私の側に寄ってきた。
 はじめは一羽二羽だったのが、あっという間に沢山………。
 
 ちょっと怖い。
 
「餌を持ってると思われたんだろうな、あんた」
 
 カモメに囲まれた私を見て、いつの間にかデッキに出てきていた岡田が笑っていた。
 
「人間にも動物相手にも隙だらけなんだよ」
 
 ムッ。
 
 何でそんな言い方しかできないの?
 
「心にゆとりがあるから愛されるんです」
「ものは言いようだな」


 岡田が笑った。
 その笑顔が、言葉とは反しとても無垢で綺麗だからしゃくにさわるのよ。
 
 
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