一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 眉をひそめて水を勧める蛯原さんに、南条さんがキレた。
 
 「その厚化粧で説教すんじゃねえ! ババァはすっこんでろ! 」
 
 「……バ?!」
 
 
 ″ ババァ ″という言葉に蛯原さんが顔を引きつらせ、言葉を失っている。
 南条さんと同じ42歳だというのに、そんな言い方ある?
 同じ女として許せない。
 
 「もう南条さんはそのままで結構です! 私、立ってますので!」
 
 掴んでいた手を振り払い、通路に強引に出ようとしたら、バスが突然動き出した。

 「……あ」
 
 ガクっと体勢を崩して、あろうことか南条さんの上に倒れてしまう。
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